土地に関わる法律の1つに土地収用法という法律があるのをご存知でしょうか?
土地を所有している場合、基本的にその土地は自分の自由に使ったり処分したりできるはずです。しかし、土地収用法が適用されると、国や地方公共団体に土地を収用されてしまう可能性があります。
土地を所有している人にとっては決して人ごとでは済まされない法律です。
そこで今回は、土地収用法の強制力と補償内容について解説します。
この記事は、
1.収用法に該当予定の土地を所有している
2.土地収用法の内容を具体的に知りたい
そういった方は一度土地収用法の具体的な内容を確認してみると良いでしょう。
土地の強制収容がもし普段生活してる場所に該当するなら、それは人ごとではないですし、補填内容をしっかりともらわなければなりません。
そういった時に知識を持っているのと、持っていないのとでは、大きな差が出るうえ、人生を変えてしまうかもしれません。
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過去の事例で見る土地収用法
法律というのはすぐに理解できるものではないですが、土地収用法という法律もいまいちピンとくるものではありません。
そんな土地収用法を過去の事例から分かりやすく見ていくことにしましょう。
過去の土地収用法の適用事例
土地収用法が話題になった事例として、最近では、2020年東京オリンピックのために土地収用が行われるので、用地買収を行っていると嘘を言って社債の募集をしていた業者がいました。
消費者センターに多数苦情が寄せられて問題になったこともあったので、この点は気になっている人も多いかもしれません。
土地収用法とは
土地収用法とは、国や地方公共団体が公共目的のために土地を必要とするとき、必要な土地を強制的に収容することを認める法律です。
土地を所有している場合に自分の土地が土地収用法の収容の対象になってしまったら、国や地方自治体に土地を渡さないといけないことになるので大変です。
土地収用法の手続きと流れ
国や地方自治体が施策を行うとき、
「どうしてもその土地が必要だ」
というケースがあります。
たとえば、安全のための道路整備や必要なインフラを整備のためにどうしてもその土地が必要なケースなどです。
このようなとき、土地の所有者と交渉しても、どうしても所有者が納得しない場合には、土地を強制的に収用するしかありません。そのための手続きを定めたのが土地収用法です。
とはいえ、土地収用法の目的となる事業は公益目的のものに限られています。
また、土地収用法によって土地を収用されるとき、いきなり何の保証もなく土地を収用されることはありません。
事前に所有者と交渉をして、任意の交渉で解決できないときに強制収容が行われます。その際も、必要な補償が行われます。
また、土地収用法によって収容された土地が農地転用されることもあります。
土地収用法の対象となる事業
土地収用法では、収容のために何らかの事業が行われることが前提です。
そして、その事業は限定されています。
どの業種の事業者でも土地を強制的に収用できるわけではありません。
そこで、土地収用法の対象となる事業がどのようなものか、見てみましょう。
これについては、公益目的を持った公共事業に限られており、具体的には、以下のようなものがあります。
- 道路(道路法)
- 河川(河川法)
- 公民館、博物館、図書館(社会教育法、図書館法)
- 国や地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所、試験所などの事業に使う施設
- 国や地方公共団体が設置する公園、緑地、広場、運動場、墓地、市場などの公共の用に使う施設
事業認定とは
土地収用法の対象事業として認められるためには、国や地方自治体によって事業認定を受ける必要があります。
よって、繰り返しとなりますが、
どんな事業者でも土地の強制できるわけではありません。
その事業認定を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 土地収用法で認められる事業である
- 起業者が、その事業を成し遂げるのに十分な意思と能力を持っている
- 事業計画が土地の適正で合理的な利用につながる
- 土地を収用、使用する公益目的と必要がある
市町村の事業や都道府県内で行われる民間事業は都道府県が認定しています。
事業認定を行うときには、事業説明会が開催されて、起業者が事業認定の申請をします。
そして、審議会や公聴会が開かれて、最終的に認定者が事業認定をするか拒否するかを決定します。
土地収用法の対象となる法律
次に、土地収用法で対象となる法律がどれに該当するのか、確認してみましょう。
・土地(土地収用法2条)
・土地についての所有権以外の権利(5条1項)
・立木、建物その他土地の定着物(6条)
・土地上の物についての所有権以外の権利(5条2項)
・土地に付属する土石や砂れき(7条)
土地そのものが収容される(所有権がなくなる)こともありますが、土地上の賃借権が収容対象になることもありますし、土地上の立木やその他の定着物、土や砂なども収容の対象になります。
土地収用を行なう当事者に該当する者
次に、土地収用の当事者はどのような人なのか、確認しましょう。
具体的には、
①起業者
②土地所有者
③関係人
この3者になります。
起業者
起業者は、公共事業を行うために、土地や権利等の収用をするものです。
具体的には、国や都道府県、市区町村などが起業者となります。
土地所有者
土地所有者とは、収用される土地の所有者です。
土地上の建物の権利者は含まれません。
関係人
関係人とは、収容される土地を借りている人(賃借人)や抵当権者など、所有権以外の権利を持っている人で、収容について利害関係のある人のことです。
土地上に建物を建てている人がいる場合、建物の所有者は関係人となります。
これらの権利を相続した人や贈与された人も関係人となります。
土地収用が行われるまで
土地収用法によって土地が収用されるとき、いきなり土地が収用されてしまうわけではありません。
土地収用前に「任意交渉」が行われます。
任意で土地の買収が行われるときには、以下のような流れとなります。
土地収用実行までの流れ
まずは、起業者(国や地方自治体)から土地所有者に対し、説明会が開催されます。
もちろん、土地の買収となると、それなりの規模で行なわれますから複数人で実施される事が多いです。
ここでは、事業概要やスケジュール、補償の方針などについての説明があります。
そして、起業者によって土地測量や建物の調査などが行われます。
その後、起業者が調査結果にもとづいて調書という報告書を作成します。
これを土地所有者に確認してもらい、署名押印をしてもらいます。
権利者は、調書を見て内容が適切かどうか確認し、問題なければ署名押印します。
すると、起業者が補償内容を決定して、土地所有者に対して説明をして補償についての交渉が開始されます。両者が納得したら、その内容で契約が締結されます。
その後、その契約内容にもとづいて土地の登記や引き渡しが行われて、約束された補償が実施されます。
このような任意交渉が不可能な場合にのみ、土地収用法によって強制収容が行われることになります。
土地収用法の補償内容
土地収用法によって強制収容が行われる場合でも、土地所有者には補償が行われます。
土地収用法による補償はどのようなものになっているのでしょうか?
土地収用法の補償はどれくらい?
土地収用法による補償では、土地所有者の権利を守るため、いくつかの原則が定められています。
個別払の原則
まずは「個別払いの原則」です。
これは、補償をするときには原則として、各人に個別にしなければならないということです。2人以上の土地所有者や関係者がいる場合にも、まとめて補償するのではなく1人1人に保証が行われます。
ただし、補償額を各人ことに見積ることが難しいときには例外も認められます。
金銭払の原則
次に「金銭払いの原則」があります。
これは、公共用地のための土地収用の損失補償は、原則的に金銭でしなければならないという原則です。ものや権利の付与で補償することは認められません。
ただし、収用委員会の裁決による場合には、替地による補償、移転代行による補償などの方法が例外的に認められる可能性があります。
起業利益との相殺の禁止
利益との「相殺禁止」の原則もあります。
これは、1人の土地所有者の土地の一部を収用する際、事業を実施することで他の土地の価格が上がるなど、利益が発生することがあってもその利益と補償を相殺してはいけない、ということです。
土地収用法による補償が行われる場合には、上記の原則に従って行われます。
土地収用法による補償の例
具体的には、どのような形で補償が行われるのでしょうか?
以下で、土地収用法による補償の例を見てみましょう。
土地の正常な取引価格による補償
まず、土地を収用するとき、正常な取引価格によって補償します。
土地の正常な取引価格は、近隣の同じような土地の取引価格を基準にして、個別の事情を考慮して決定します。
土地上に建物がある場合の補償
土地上に建物やその他のものがある場合には、建物がないものとして土地の取引価格を算定します。ただし、借地権が設定されている場合は借地権価格を控除します。
借地権者には、借地権分に応じた補償が行われます。
事業による土地価格低下の影響に対する補償
事業が予定されることにより、土地の価格が低下してしまった場合には、事業による影響がないものとして土地の取引価格を算定します。
たとえば、土地上に火葬場や墓地、下水処理場などが建設されることが決まったら土地価格が下落しますが、この場合には下落前の価格をもって補償が行われます。
残地の価値低下に対する補償
土地が収容されることによって残地の価値が下がる場合には、その損失も補償の対象になります。
建物の移転に対する補償
土地収用によって建物の移転が必要になる場合には、その移転費用の補償があります。
営業が困難になった場合の補償
土地上で営業をしていた場合には、土地収用によって営業できなくなったり困難になったりすることがあります。
この場合には、営業に対しても補償があります。具体的には、営業が廃止されたとき、休止されたとき、規模が縮小されたときの各場合に対する補償があります。
土地収用法のまとめ
以上のように、土地収用法が適用されたら、土地所有者でも土地の所有権を失うことがあるので、影響が大きいです。
ただ、土地収用法が適用されるのは、上記の通りかなり限定された条件下です。
そもそも国や地方自治体による公共事業目的でないとほとんど認められませんし、いきなり強制収容されることはなく、事前にしっかりと協議をします。
任意での買取がどうしても不可能な場合にのみ強制収容が行われます。また、収容が行われる場合であっても、正当な補償が受けられます。
しかし、土地収用法が適用される前であっても、正当な補償を受ける前に「今の土地がいくらくらいの価値なのか」を把握していた方が、任意交渉の際に当然良い結果が出るでしょう。そうなる前に事前に土地の価格査定しておく事をおすすめします。
いずれにせよ土地を所有していても、いきなり土地収用法によって国に土地を取られる、というものではないので、不安になりすぎる必要はありません。
本記事をきっかけに、土地収用法と今の土地価格について正しく理解しておきましょう。
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